「一人だけ著名人に会えるとしたら、あなたは誰に会いたいですか?」

 

 

 

 

この質問に、”故人も含める”とあったならば、私は何日間も迷い続けるでしょう。
作曲家、作家、演奏家、歴史上の偉人…会いたい人であふれています。

 

けれど、これが
”現存する人物に限定する”ならば。

私が会いたいのはたった一人。

 

それは、”小沢健二”さんです。

 

 

昨日7月29日。日本時間では、もう一昨日のこととなってしまいましたが。
『フジロックフェスティバル2017』で、小沢健二さんのステージが行われました。
ドイツにいる私は、聞きに行った方々からの情報を集めることしかできません。

 

19年ぶりにシングル『流動体について』を発売し、活動を本格再開したといわれている小沢健二さん。
以前、そのことを知った夜、早速その世界に耽溺しながら、『流動体について』に寄せた文をフェイスブックに投稿しました。

 

そしてまた今夜。
それを新たに加筆修正して、ブログ記事としてアップしようと思います。

 

 

長い時をかけ散らばった点と点が、ふとしたきっかけで線につながる。
その瞬間に無常の喜びを感じます。

 

“Quadrivium”

中世、ボエティウスが伝えたとされる四科──算術、音楽、幾何学、天文学のこと。

『神の作った世界の調和を知るための学問』という言葉、のだめカンタービレを読んだことのある人ならば聞いたことがあるのでは。

 

『流動体について』を聞いている夜。
歌詞に散りばめられた欠片から、ふと浮かんだのが前述の言葉でした。

 

 

物心ついた頃から手元にあり、幼い私が飽きることなく遊び続けていたのが”スピログラフ”。
幾何学模様を描くための定規だったとこの歳になって知りました。

 

”スピログラフ”
Wikipediaより転載

 

ペンの色を変え、場所を変え、時には重ね。何度も何度も、それとは知らず幾何学模様を絵描き続けた幼稚園時代。

休み時間の度に図書室へ通い、ただ楽しいという理由だけでノートに星座盤を書き写し続け、休日のプラネタリウムをなによりの楽しみにしていた小学生時代。

数学者が生み出した本から”Alice”という名前をもらい、そして今、音楽を続けていること。

 

自分が歩んできた道は、確かに”いま”へとつながっている。
そう確信できたことに、大きな喜びを感じています。

 

 

小沢健二さんの書く歌詞は、いつも、見えないなにかの手によって差し出されたかのように、私の音楽人生の道端にそっとおかれています。

 

心がわりは何かのせい?
あまり乗り気じゃなかったのに
東京タワーから続いてく道
君は完全にはしゃいでるのさ

――― 小沢健二 『僕らが旅に出る理由』

 

旅立つ彼女を、”ぼく”は東京タワーから続く道を行き、空港へと送っていきます。

私がドイツ留学へと旅立つ日。
早朝の羽田へと向かう道すがら、突然あらわれた東京タワーに、この歌詞を思い出しました。

 

 

羽田沖 街の灯がゆれる
東京に着くことが告げられると
甘美な曲が流れ
僕たちは しばし窓の外を見る

もしも 間違いに気がつくことができなかったのなら
平行する世界の僕は
どこらへんで暮らしているのかな
広げた地下鉄の地図を隅まで見てみるけど

神の手の中にあるのなら
その時々にできることは
宇宙の中で良いことを決意するくらい

雨上がり 高速を降りる
港区の日曜の夜は静か
君の部屋の下通る
映画的 詩的に 感情が振り子を振る

―――― 小沢健二 『流動体について』

 

羽田沖、東京へと着陸し
地下鉄の地図を広げ
港区へ

これは私の、”ふるさと”への道です。

小沢健二さんの乗る飛行機はアメリカを拠点にし、いま日本へと着陸しています。

 

 

そして私

私はいずれ、どこへ着地をするのだろう

ふと
そんな不安にも駆られるけれど

 

だけど意思は言葉をかえ
言葉は都市を変えてゆく
躍動する流動体 数学的 美的に炸裂する蜃気楼
彗星のように昇り 起きている君の部屋までも届く

――――小沢健二 『流動体について』

 

私の意志が言葉をかえ、都市をかえ
私は、今、ドイツにいる

この飛行機は、また別の国へと飛ぶのか
それともここに、居続けるのか

けれど

それとは気づかぬ幼少期のころから今まで
私は確かに、音楽を学ぶための道を歩んできたのだと教えてもらえたから

 

これから先、進んでいく道にも
恐怖はありません。

 

 

 

 

 

 

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【ドイツ在住チェロ奏者・エッセイスト】 東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、東京藝術大学音楽学部を経て、渡独。現在 Hoschule für Musik Mainz(マインツ音楽大学) にて留学中。 ドイツと日本の二カ国を拠点とし、演奏・執筆活動を行っている。 詳しいプロフィール・他記事はサイトまで。